屋上防水:部分的な施工を勧めない理由

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屋上防水:部分的な施工を勧めない理由

2022/10/26

弊社は足場を使った大規模修繕よりも部分施工を得意としています。

その弊社でも屋上防水は部分的な施工はお勧めしません。

穂高外装メンテナンスLLC.はロープを使った部分補修を得意としているため、状況によってはその方がいい場合を除き、無理に施工範囲をひろげようとはしないことを旨としてます。そこに他社さんとは違う信頼感ができるものと思っています。今ではほとんどないでしょうが、突然やってきて、屋根がやばいです、家が崩れます、といったようなひどい脅し営業をやる業者が後をたたなかった時代のトラウマもあり、極力不安になるような言い回しは避けるようにしています。ただ、やはり、全部やっといたほうが、あとあとも含めて考えると提案としては妥当な場合も多々あります。その代表が屋上防水です。その理由を是非とも知っていただきたいと思います。

最上階の雨漏り。その直上の屋上を疑うのは当然

建物の造りを問わず当然のセオリー

最上階の雨漏りの場合、当然ながらその直上の屋上を疑います。そして多くの場合原因はやはり屋上であることが多いのも事実です。広い屋上の場合、その直上だけ防水すればいいのではないか、と考えるのも当然だと思います。実際に部分的に直上だけ防水をすれば止まる場合もあります。ただ多くの場合、違う箇所で雨漏りした、再発した、となる場合が多いのも事実です。もちろん、無理に全部やってくださいというものではありませんが、治らない場合、再発する場合の、「なぜ治らないのか」「なぜ再発するのか」のメカニズムを知っているのと知らないのとでは判断も変わってくるかと思います。

まずは、雨漏りしていないから浸水していない、ではないことから説明します。

一般的な屋上浸水からの雨漏りのメカニズムと防水の役割

雨漏りしていない=浸水していない、、ではない

コンクリート、アスファルトには水は染み込みます。例えばイメージしやすいように、何も処理をしていないコンクリートの陸屋根(平たい屋上)だったとします。受けた水をコンクリートは吸い込みます。吸い込むより早く勾配をつけて水を流してしまうのが雨仕舞いの考え方ですが、ここでは少しその話は置いておきます。コンクリートが雨を吸い込むからといってこれが即雨漏りにつながるかというとそうではありません。吸い込む量をコンクリートが許容すれば雨漏りはしません。染み込んだ水がコンクリートに及ぼす劣化については後述しますので、ここでは、コンクリートは雨を吸うことと、それをコンクリートが許容してしまえば雨漏りはしないということを押さえていただければと思います。

もう一つ頭に入れておくべきこと

おもてに現れずとも劣化は進行している

これも脅しているような題になりましたが、RCや、ALCの場合、劣化が進んでいるからといってすぐに崩れ落ちるようなことはまれです。爆裂や、ひび割れなど、おもてに何らかの兆候が先に現れることが多いです。逆に特に爆裂は見つければ剥落の恐れがあるため、処置はもちろんですが、原因も考えた方がよい兆候になります。

爆裂:主に吸い込んだ水などが原因でコンクリート内の鉄筋が錆びることにより膨張し周りのコンクリートを押し上げる現象。

ひび割れ:建物の振動などの動きによりコンクリートにひびが入る。角部や開口部の4角、揺れが始まる階層などから現れることが多い。

これらの現象は、おもてに現れる場合と、コンクリート内部で密かに進行しているばあいがあります。密度が濃いコンクリートでも、密度が薄いALCならなおさら、含んだ水の流れ道を作っている可能性があります。

防水の役割

何らかの処置をしないとコンクリートの劣化速度が上がる

建物は強度を持たせるためにコンクリートの中に鉄筋が入っています。なんの処理もしていないコンクリートは水を吸い込みますから、なにも処理をしていないコンクリートの中の鉄筋はより錆びやすくなるのは必然です。そのため、打ちっぱなしのコンクリートの外壁などでも、クリアの防水塗装を施したり、浸透性の撥水剤を塗布したりと、基本的には何らかの処理がしてあるのが一般的です。当然1番雨の当たる屋上の防水は重要になってきます。

染み込んだ水が真下に出ないメカニズム

染み込んだ真下にでるとは限らない

さて、いよいよ本題。

下の図のように例えば極端に、1箇所だけ大きく水を吸い込む場所ができてしまったとします。そのとき全く劣化していないコンクリートや、建物にまったく動きや、勾配がない建物の場合は分かりやすく、真下に落ちるかもしれません。もちろん、そうでなくても真下に落ちる場合もあります。それは染み込む速度が速い場合になるでしょう。染み込む速度が遅い場合は内部のクラックを道にして、勾配などで水が流れて、広い空間に水がたまり、思わぬところで雨漏りする場合があります。図は分かりやすくディフォルメしてますが、実際には感じられない勾配や、目に見えない隙間や空間に水が溜まって雨漏りするのです。

なぜ、部分防水ではとまらない雨漏りがあるのか

ここまでご理解いただければ一目瞭然

部分防水をしても雨漏りがとまらない原因は下の図の通りです。黄色い部分の雨漏りの直上をだいぶんと広めに部分防水したとしても別部分から浸水があると、劣化具合や勾配により、内部に水の通り道(クラックや、爆裂)があり、何らかの原因でスラブと外壁などの隙間に水が溜まったりすることが原因な場合はこの部分防水では止まりません。

では、このペケ部を見つけてしまえばいいのですが、目に見えたクラックが原因の場合はわかるかもしれません。また、あきらかな防水塗膜の劣化がみつかればそれの可能性も高いです。ただ、雨漏りするような場合の屋上は、防水が効いていない状態(処置していないコンクリートに近い状態)だったり、あちこちに原因になりそうなクラックがあったりします。防水をしたばかり、という場合はべつですが、10年以上放置された屋上防水の場合、防水機能が失われてしまっている場合もあります。

上の図のように複数、あるいは全体的に染み込みがある場合、緑のペケからの浸水がなくなるので、ましになったり、止まったりするかもしれませんが、とまらない可能性があるということです。

もちろん、部分的に、、で効果がある場合や充分と思える状況もあります。

縁を考える

建物の造りによっては、部分防水でいい場合ももちろんあります。部分防水を考える場合は、縁を見極めることが大切だと考えます。段差や、開口、独立した部分など、ここの雨漏りにはここは原因としては考えにくい場所というのがある場合もあります。その部分が、多いか少ないかによっては作業効率的に全部やっても対して値段がかわらないという場合もあれば、全然変わる場合ももちろんあり、一概にはいえませんが、少なくとも、ここまでの話を頭にいれておくと、実際の雨漏りと補修の仕方、全体がいいのか、部分的でもいいのかの、目安が立ちやすくなると思います。

 

これはコラム的な余談になりますが、、

外壁補修、屋上防水の見積は多くの場合㎡単価で表示されます。こう表示されると普通でかんがえて、1㎡単価1000円とすると5㎡で5000円、10㎡なら10000円となりますから、逆にいえば10㎡を5㎡にすれば5000円とはいわないまでも、結構安くなる気がします。ここではわざと、少ない平米で極端な話をしましたが、すなわち、5㎡でも10㎡でも、平たい場所をぬるだけなら、作業効率はほとんどかわりません。すなわち人工や搬入搬出費用は変わらず、わずかな材料費、処分量などがかわるだけです。なので、業者としては5だろうが10だろうが、本来あまりかわらない値段になってくるというわけです。だから、すこしの部分を塗り残しても、値段がわずかしかかわらないのであれば、屋上防水に関しては、全部やってしまうことをお勧めします。

 

もうひとつ

雨漏り調査をする場合、屋上が要因から消せる、、というメリットはすごく大きなことになります。ここまで書いてきたように、屋上からの浸水はどこに雨漏りとしてでるかわかりません。その調査の場合、屋上があまりに劣化している場合、屋上からの浸水を考えざるを得なくなります。実際、かなりはなれた階の雨漏りが屋上防水をすることによって止まった事案はかなり多くあります。屋上防水がちゃんと効いているから壁からでしょう、、と、わかるということは無駄な工事を減らす上でも重要な要素になります。

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